物流の次の時代をもっとおもしろくする。私たちにはその責任があります。

今回取材させて頂いたのは、福塚運送株式会社、代表取締役の福塚さんです。「トラックドライバーを、子供のなりたい職業にしたい」「運送業の魅力を知ってほしい」と3代目社長にして様々な取り組みをされています。人員不足、高齢化、過労など運送業が抱える問題の具体的解決策と、社長の考える未来図をお伺いしてきました。

福塚運送株式会社
代表取締役 福塚 正徳

創業50年を超えるタンクローリー専門運送会社の3代目社長。現場が好きで、現場優先を徹底して考えています。「お客様のためにも、社員の安全も現場がすべて。現場からの提案・改善と挑戦をともに積み上げてきた先に今がある」と、熱く語ってらっしゃいました。

タンクローリーで弊社に運べない物は無い。

―『タンクローリー専門の運送会社』ができるまでの、成り立ちを教えて下さい。

創業当時は油の原料や製品を平ボディーで運んでいましたが、タンクローリーが出始めた頃すぐにタンクローリー輸送に切り替え、植物油脂・動物油脂の輸送に従事していました。お客様からのご縁で糖類の輸送にも参入し、そのノウハウを活かして今ではほぼすべての液体食品原料の輸送に対応しています。食品以外にも要請があり、数多くの新規案件の立ち上げにも参加してきました。今では協力頂ける企業様も多く、液体輸送の問題には何かしらの答えは出せるようになりました。今後も輸送品質と対応力を向上させ、他社が真似できない当社独自の輸送をしていきたいと思っています。

タンクローリーにしかできないことがある。
この道の現場のプロとして譲れないものがある。

―品質を向上するために取り組まれていることはありますか?

品質の最大のポイントは何といっても安全性と考え、とにかく交通安全を学ぶ回数を増やすよう努めています。運転が仕事の大半なので、どの職業の方よりも安全な運転を身に付けてほしいと願っています。荷役も含めた安全は、お客様も巻き込んでやるべきものと考えています。当然私たちがまず、確実な作業をすることは当たり前の事ながら、現場にはまだまだ不安全につながる要素が転がっていて、それらをお客様に改善提案しています。タンクローリーは工場のパイプラインと同じです。パイプラインが寸断されると工場が止まってしまいます。私たちの根底にある使命感も同様で、単なる運び屋ではなく、その一員として深く関係し、現場環境と作業の確実性の両面から捉えて安全対策を行っています。

―安全対策の具体策を教えて下さい。

月1回の安全会議があり、そこで問題提議のあった事柄を改善しています。一見地味な取り組みかもしれませんが、コツコツ続けることに意味があると考え、何十年も継続しています。他にもドラレコの映像を取り入れた1コマ20分程度の研修と、昨年からは月1回の教育の専門会社の安全研修も追加しました。特に力を入れているのは安全担当による現場巡回です。安全性・品質向上の視点でチェックを重ね、必要であれば指導しています。

―安全教育を強化して変化はありましたか?

どうしても運送屋は走ってなんぼという価値観がありますが、だからこそ自分たちのためにも社会のためにも「安全に走ってなんぼ」であるべきと考えています。安全を大事にする文化を醸成したいと願って取り組んだ結果、一人ひとりの安全意識が年々向上していることを実感しております。安全スキルは個人の財産。『ここにいればその財産が貯まる』そんな環境を作りたい。目指すは生涯無事故です。

なんでもやったからわかった。この運賃では未来はない!

―運送業界に入ったきっかけを教えて下さい。

大学2年生の頃にバブル崩壊を体験。高卒には仕事が沢山あって、大卒には仕事が無い時代でした。どこの会社も暇そうな中、1社だけ人手が足りなくて電話も鳴りっぱなし。面接は2時間待ちの会社があって。いざ面接になったら「何ができる?」って聞かれて「何もできませんが、何でもやります!」と答えたら採用になりました(笑)。言った通り本当に何でもやりました。最初は配車、そして営業に抜擢されました。貨物軽自動車運送事業でしたが、すべての車種を使ってなんでも運びました。生活用品、工具、文具、食品・・・ほんまに何でも。一番大きいものは約8mのキャタピラを町工場からクレーンで引っ張り出して・・・(笑)。面白かったですね。

―そこで経営を学ばれたのですね。

その時の社長に経営を学び、上司に営業を教えてもらいました。いまだに足を向けて眠れません(笑)。実家に戻り、頂いている運賃の安さに驚愕しました。私が知っている経営とは全く異なるものでした。当時は水屋が全盛期、実運送業者に最も負荷がかかっている時代でした。どう考えても赤字、雇用の維持のために仕事をかき集めていながら、赤字を積み重ねていました。社員みんなも我慢してくれているけど、このまま事業継続することは誰のためにも良くないと思う時期もありました。でも「みんながいる」と思うと吹っ切れました。このままでもいずれ倒れるなら、一か八か何でもやってみよう!と。これ以下は無いからやるしかないので、迷いはありませんでした。社員に還元するための利益を上げるまではと我武者羅に走り回って、次に気が付いたのが「うちだけ変わっても長くは続かない」これは業界全体の問題だと思いました。

この業界が変っていくための、1つのきっかけになれたらと思っています。

私はこの仕事が本当に好きです。でも冷静に見れば今では人気のある職ではないのは事実。この状況を今私たちが変えなきゃいけない。今の最大の問題は相場観に支配された安い運賃とそれに辻褄を合わせている現状です。安全・合法的で、会社も個人も持続可能であるために、必要なコストを賄える運賃の水準を、業界全体が本気になって作っていくことが必要です。物流はライフラインです。この先もずっと誰かがやってくれないと社会が不便になってしまいます。若い人たちが意欲的にどんどん参加してくれて、持続・成長できるような業界になってほしい。そういった意味では『ドラピタ』さんのビジョンにはとても共感できるんです。”子供のなりたい職業”を目指したい。これが私の目標ですね。

―こどもミュージアムプロジェクトにも参加されていますよね?

このプロジェクトに参加して、本当に勉強になりました。大きな目標としては創始者の宮田社長の想いに共感したこの社会から事故を無くさなければいけないということと、弊社のトラックが少しでも役に立つのであれば素晴らしいことだと思ったからです。実際に参加してみた結果、トラックに子供の絵がラッピングされていると注目されて、「ちゃんとやらなきゃ」と自発的な安全意識が生まれました。他動的にやる安全運転と、心から自然に湧き出る安全意識は全く力が違います。さらに欲を言うと運送やトラックを身近に感じてくれる子供が一人でも増えてくれれば嬉しいです。

―未来を担う子供たちに向けて、一言お願いします。

運送の仕事は目立たないけど、とても重要な仕事です。今の日本の運送は「自動車」が支えているのではなく、「人」が担っています。そのため自動運転になっても、この仕事は無くならないと自信を持って言えます。確かに無くなる運送もありますが、人の想いをつなぐ運送、独自のサービスとしての価値を持った運送はますます必要とされると思っています。弊社の目指すところは、そういった運送屋です。私はひと世代前のような「運送屋」って言い方が好きです。人が主役という感じがして。これからも福塚運送は、人が輝ける場・成長できる場であり続けるように、そして業界全体が面白くなるように全力でやっていきますので、ぜひ若い皆さんの力を貸してください・・・!

会社概要

  • 社名     福塚運送株式会社
  • 本社所在地  〒581-0033 大阪府八尾市志紀町南1-117
  • 設立     昭和37年7月30日
  • 代表者名   代表取締役 福塚 正徳
  • WEBサイト http://www.fukutsuka.com/
  • 事業内容   一般貨物自動車運送事業