ダイバーシティや社会課題に取り組む企業で、現場が感じている生の声を届けます。

今回、取材させていただいたのは、大橋運輸株式会社で働く6名の社員の方たちです。設立67年を迎える大橋運輸は、長らく自動車部品輸送の業務をメインで行っていましたが、「地域の中小企業こそ地域課題に取り組むべき」といった考えから、2000年代に生前整理・遺品整理サービスの個人部門を新たに立ち上げられました。ビジネスモデルの拡大だけではなく、今まで以上に健康が重要視される時代の中で運送という観点から安全の根源は「健康経営」であると考えるようになったそうです。また早くから付加価値提供の基盤となる、人財の多様性の尊重も掲げています。こうした、地域産業とともに成長してきた大橋運輸だからこそ見えてきた、地域課題にまっすぐに取り組む姿勢など5つのテーマに沿ってお話をお伺いしてきました。

思い出を遺族と一緒に整理する「遺品整理」とこれから先の人生をより良いものする「生前整理」。

グループリーダー 川本さん
グループリーダー Kさん
高校生の頃、アルバイトとして入社し8年目。リーダーになって3年目を迎える。もともと勉強が大っ嫌いだったが、社長の教えの元、今では大学の講演会も務める。「いい会社に入るのではなく、いい会社を創る」がモットーで、従業員が参加型で働ける大橋運輸の風土がとても気に入っている。

―さっそくですが、遺品整理のニーズはそもそもどのくらいあるのでしょうか。

ここ10年~20年は確実に収益を上げられる事業として、世間的にも注目され始めています。遺品整理業を扱う上で避けては通れないのが、日本が抱える社会問題です。超高齢社会や核家族化や未婚率の増加が進み、急速に市場ニーズが伸びてきています。

―具体的に、遺品整理とはどんなお仕事ですか。

ご遺族の代わりに遺品の片付けや清掃、不要品の処分を行います。作業工程としては、不要品回収と同じなのですが、全く業務の意味合いは異なってきます。残されたものはすべて故人や遺族の“想い”が詰まったもの。それは全て“ゴミ”ではなく思い出の品なんですよね。故人ひとりひとりの人生のストーリーがそこにあるんですよ。日々の業務の中で遺族の方が不意に涙を流されたりすることもあります。責任も当然ありますが、大きな感動の瞬間に立ち会える貴重な仕事だと思っています。

―なるほど。次に生前整理のニーズや仕事内容を教えてください。

たとえば、引越しや介護施設の入居の際に荷物が多く、断捨離や物の整理として行う方が非常に多いですね。また、高齢者もスマホを持つ時代、遺品整理時に必ず問題に上がる不要なデジタル遺品(個人情報やデータ)を残さないための整理もあります。終活のイメージが強くあると思いますが、40~50代で第2の人生のための生前整理を行う方も増えてきていますね。最近では、自然災害も頻発している中で、防災のための荷物整理として利用する方も増えてきています。作業工程としては遺品整理と同じなのですが、生前整理ではお客様に対して生活する上でのアドバイスや家具の配置のご提案など、より具体的に今後のライフスタイルをお客様と一緒に考えます。課題としては、まだまだ、遺品整理に比べると認知度が低いのが現状ですね。

―かなりデリケートなお仕事だと思うのですが、この仕事の難しさはどのようなところにありますか。

高齢者の方たちを相手にすることがほとんどなので、私たちのような若手がご提案をしても聞き入れてもらえないことがあります。大前提、私たちよりも長く生きてきた人生の大先輩方を相手にするので当たり前ですよね。だからこそ、お客様の価値観や人生観に寄り添ったご提案ができるように、できるだけお客様の気持ちを汲み取りながら話をするようにしています。3聞いただけで10理解ができないと、難しいです。提案力はもちろん必要ですが、ヒアリング能力空気を読む力がかなり鍛えられたと思います。男性が多い職場ではありますが、女性を含め多様な方が活躍できる仕事だと思いますね。

国籍や性別、年齢の壁をなくし、ダイバーシティという言葉に違和感をなくし当たり前の環境にしたい。

個人サービス部門 Mさん
知人の紹介で入社し7年目。現場の仕事を中心に、配車業務まで担当。会社の気に入っているところは、社長との距離がとても近いこと。社員ひとりひとりに親身にアドバイスをくれる気さくな社長が好き。今後は支店を任される人材になれるよう日々、成長中。

―貴社がダイバーシティを意識的に取り入れ始めたきっかけはありますか。

運送業界の人手不足が深刻化し、人材を確保することが年々難しくなってきているなかで、もっと女性社員の採用に積極的に取り組んでいこうと社長が決断したことが始まりでした。そこから徐々に発展して、ダイバーシティに注目するようになったと聞いています。

―意識的に採用ターゲットを変えたことで何か変化はありましたか。

事業内容的にも体力のいる仕事なので、設立当初から男性社員が多かったのですが、内勤だけではなく現場にも女性が増え、かなり現場のムードも明るくなりました。現場の2割程度が女性社員なのですが、気配りが上手ですし、お客様との関係性を構築するのも上手ですよね。業務的に、女性が活躍するのは難しいと思われがちですが、正直言ってしまうと女性に肉体労働はあまり求めていません(笑)そこは体力に自信のある男性社員がやっています。完全な分業制とまではいかないですが、それぞれの得意を活かした接客業務を中心にお任せしています。また運ぶものによっては、男性より女性が運んだ方がよいものもあったりするので助かっていますね。

―ダイバーシティの観点から、今後の取り組みや目標などはありますか。

今回は女性社員の活躍の話が中心でしたが、もちろん弊社ではさまざまな方が活躍しています。
LGBTQをはじめ、障がい者、高齢者、外国籍社員など。今まではダイバーシティに重きを置き、多様な人材が活躍できる環境を整えてきましたが、人材が定着し始めた今、次なる施策としては「活躍」を意識したインクルージョンに力を入れています。「やさしい日本語で話しましょう!」と意識的に社内で呼び掛けをしたり、外国籍社員を対象に日本語教室を開催しています。また、仕事もプライベートも充実できるようにと、「趣味応援企画」を実施。会社が趣味に関するものを上限5万円まで購入支援してくれるという太っ腹企画なんです(笑)第1回を開催し、12応募中3名が抽選で当選し、ロードバイクやドローンを購入していましたね。今後は、費用面だけでなく、よりプライベートを充実させるための企画も検討しているそうです。

運送業界未経験だからこそ見えてくる基本的な安全意識を大切にしています。

安全衛生推進室 Yさん・Mさん
(写真左・Yさん)入社7年目を迎え、女性管理職として室長を務める。前職は鉄道会社で社員教育を担当した経験もあり、安全に対しての思いは人一倍強い。
(写真右・Mさん)入社4年目。2人目の子どもが1歳の時に入社。とても人間関係がよく、子育てママが働きやすい環境が気に入っている。

―安全衛生推進室は、女性が多く活躍していますが、ドライバー経験がなく大変なことはありますか。

(Yさん)私たちの仕事は、現場で働く社員の安全を守ることです。交通安全への意識というのは、ドライバーの実務経験がなくても、普通免許を取得して車を運転する方なら、誰もが共通して意識しないといけないことですよね。むしろドライバー経験のない私たちだからこそ、運転への変な癖や慣れがなく、本当に基本的なことを当たり前にお伝えできているのだと思います。社員の命や人生に関わる業務を任されているので、責任は重いですが、その分、「ドライバーの皆さんを守る」という使命感が強く、やりがいは十分ある仕事だと思います。

―業務を行う上で、気を付けていることはありますか。

(Yさん)業務で起きたミスは注意するのではなく、なぜそれがいけなかったのか、また今後はどのようにすれば起きないか改善策を教えるなど常にポジティブな言い方で伝えるように心掛けています。事故防止を呼び掛ける際も、あれはダメ!これはダメ!と頭ごなしに押さえつけても余計反発してしまうと思うので、「イエローストップを意識しましょう」「進路変更はウィンカーを3秒出してからしましょう」など前向きな表現を使うことが多いですね。ただ厳しくするのではなく、女性らしい優しいニュアンスが、素直に受け入れてくれているポイントだと思っています。

(Mさん)私は毎月ドライバーさんに運転スコア表をお返しする際に、小話を書いたお手紙を添えてお渡ししています。たとえば、禁煙や車内清掃、身だしなみなどお題は様々。ドライバーさんは文字ばかりだと読みたがらないので、イラストやジョークを入れるなど紙面で伝わりやすい表現とユーモアを大事にしています。少しでも私の小話で安全について考える時間が増えてくれてればいいなと思っています。

―女性視点で貴社の働きやすいところはどこだと思われますか。

(Mさん)内勤者にも裁量を持って働かせてくれるところですね。企画を提案すれば、役職や勤務年数に関わらず任せてくれます。最近だと安全大会の中で1コマを担当させていただき、安全に対する考え方をテーマにした社員紹介動画を制作しました
あとは私自身も子育てママとして入社したのですが、当社は働くママに対しての理解がかなりあるところも助かりました。子供の熱が出たときは遅刻も欠勤も、嫌な顔せず許可してくださいます。

(Yさん)そうですね。子育てしながら働くことの大変さを痛感した先輩ママがたくさんいるので、若い社員がそんな思いをしなくて済むように「ジョブシェア制度」という仕組みを整えています。急な休み連絡にも焦らず対応できるよう、担当者ごとに業務の可視化を行うことで、属人的にならずいつでも誰でも業務を交代できるようにしています。

管理栄養士を目指して日本へ。小さなきっかけから健康への意識を習慣にしたい。

安全衛生推進室 Tさん
入社1年目。中国出身。母の病死をきっかけに、母国で医師を目指していたが、母と同じ病症の方が医療処置を受けずに目の前で亡くなったことを機に、「治療より予防」の大切さを悟る。病気を未然に防ぐ管理栄養士になるため、栄養学を学びに来日。長寿国で国民の健康意識が高い日本で経験を積みたいと思い、管理栄養士として入社。

―健康経営のため、管理栄養士を常駐させたきっかけを教えてください。

社員の安全を守る基本となるのが、健康です。健康経営の戦略の1つとして当初は食育に注目し、2018年ごろから管理栄養士を採用し始めました。

―普段、どのような業務を行っているのですか。

健康診断の結果をもとに、個人面談を行い健康的に生活できるよう栄養面や睡眠、運動などさまざまな角度からアドバイスさせていただいてます。ほかにも、食育の一環で社員に食材を配布したり、ウォーキングイベントを行っています。特にウォーキングイベントは私が企画から立案、実施まで任せていただき、社員さんからも好評で、年3回の定例イベントに定番化すると話に上がったときは、とても嬉しかったですね。

最近力を入れている取り組みなどはありますか。

感染症拡大の影響もあり、直接面談が行えないので、社内向けにLINEの公式アカウントを立ち上げました。参加型の景品付きクイズを出したり、週1回は健康意識を高めるための知識をアウトプットしたりしています。発信を続ける中で今までよりも身近に感じてもらえたのか、ドライバーさんに気軽に相談してもらいやすくなりましたね。「健康を意識するようになって、ダイエットに挑戦して去年よりも10キロ痩せたよ!」なんて嬉しい報告も。少しでも私がきっかけで健康への意識を変えられたことが、今はとてもやりがいに感じています。今後も、健康にあまり関心がない方や、変わりたいけど方法が分からないという方をもっと巻き込み、行動に移せなかった方を動かせるような人になりたいです

地域活動は、地域とともに歩んでいる証拠。大橋から地域へ。日本から世界へ。夢は大きく持っています!

企画課 Hさん
山口県出身。新卒で入社し4年目。大学生の時に留学し、いろんな国籍の方と関わりダイバーシティに興味を持つ。帰国後はダイバーシティに力を入れている企業を中心に就活し、大橋運輸と出会う。

―貴社が地域活動(CSV)に精力的に取り組み始めたきっかけは何ですか。

運送事業って目に見えないサービスですよね。一般の方には分かりにくかったり、気にも留めていなかったり。遺品・生前整理のサービスもBtoCの事業なのにまだまだ身近なものではない。そして、こんなにもたくさんの取り組みを通して社会に貢献したいと考えている当社のことをもっと地元の方に知ってほしい。そんな想いをから地域活動(CSV)を始めました。「仕事を通じてお客様や地域に貢献する」を企業理念に掲げ、もっと地域から信頼される企業となるべく警察と連携して交通安全教室や、高齢者を対象とした特殊詐欺対策・防災対策を行っています瀬戸はトラックが多い街なので、幼稚園生や小学校低学年の頃から安全への意識を強く持ってほしいと交通安全教室を始めました。また地域の健康寿命を延ばす健康サポートの一環として、太極拳教室も始めました。今後の展開としては行政とタッグを組み、健康セミナーの開催も計画しています。

―ダイバーシティに注目して入社したそうですが、今の目標を教えていただけますか。

海外メンバーからリーダー職を輩出したいです。能力はあるのに言語や文化の壁があると感じ、日本語教室を企画しました。また海外メンバー向けに日本語でメルマガ配信もしています。日本で生活する上で絶対に知っていてほしい時事ネタやビジネスマナー、ビジネス用語について解説しています。学生の頃は留学経験から、日本と海外の架け橋になりたいと思うようになり、外国籍の方が活躍している会社に就職を考えていました。また地域課題解決型ビジネスにも興味があり、就活していた時に大橋運輸にビビッと来たんですよね。今後は社内を飛び出し、地域支援の新たなサービスを作りたいと考えています。ダイバーシティは社会づくり、大橋から地域へといい波紋が広がれば嬉しいですね。

会社概要

  • 社名     大橋運輸株式会社
  • 本社所在地  〒489-0912 愛知県瀬戸市西松山町2-260
  • 設立     1954年3月17日
  • 代表者名   代表取締役 鍋嶋洋行
  • WEBサイト  https://www.0084.co.jp/
  • 事業内容   一般貨物自動車運送事業 / 貨物運送取扱事業/ 油脂仕入販売 / 一般廃棄物収集運搬業 /産業廃棄物収集運搬業 / 引越サービス / 物流情報サービス / 労働者派遣事業 /不動産賃貸業 / 古物売買