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タクシー運転手 体験談

沈黙と観察

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密室のできごと

接客を自分の仕事にしたいと思ってタクシー運転手になった。
世の中にいろいろな接客業があるが、タクシー運転手はタクシーという密室でお客さんと1対1になるので、他よりも密度の濃い接客が求められると思ったからだ。
最初はなかなか思うような接客ができなかった。「おもてなし」を考え、いろいろ話しかけたのが失敗だった。話題は、差しさわりのない「天候」「景気」などを選んだが、無視されたり、面倒くさそうにうなずき返されたりした。お客さんは要するに「黙って静かにしていたい」のだ。
そこで「こちらからは必要なこと以外は話しかけない」を基本に接客するようになった。これがうまくいった。
もちろん、お客さんから話しかけられれば、それにはていねいに対応する。しかし、あくまでもお客さんに「話してもらう」のが大切であって、こちらの思いや主張を伝えることは「やっちゃいけないこと」だ。つまり「聞き上手」になることが肝心なのだ。

見つかった異変

もう一つ大切なのは、お客さんをよく観察すること。表情や話し方、動作などから、お客さんがどんな精神状態なのか、どんな体調なのかを読み取らなければいけない。
これを、タクシーを運転しながらやるとなると、結構大変。それだけにやりがいはある。
とは言え「このお客さんは悩みごとを抱えている」と、仮に分かったとしても、それを直接聞いたりしてはいけない。つまり、お客さんをしっかり観察しても、その観察結果を生かせる場面はそれほどない。
でも、自分の接客や運転で快適に過ごしてくれているかどうか、それを知るためにも観察は大切だ。
一度、お客さんが苦悶の表情を浮かべて座席でうずくまっていることがあった。これはもはや「観察」のレベルではなく、一目瞭然で「異変」だと気づいた。明らかに体調を崩していた。話しかけると、答えることもままならないほどだった。
「病院に行きますか?」と聞くと、うなずいたので、最寄りの救急病院に直行。事なきを得た。
たまにそんなこともある。

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